まだまだ知りたい新型コロナのこと
教えて!上林先生!
まだまだ、わからないことがいっぱいの、新型コロナ。
OPEN THE DOOR に寄せられている質問に、
免疫学者の上林拓先生にお答えいただきました。
Q:新型コロナも空気感染するのでしょうか?
A:今のところ、空気感染をするという確実なデータはありません。どのウイルスも、進化のうえで基本的にこれらの特徴を持ちます。
1)時間とともに感染力が高まる これは自然選択によるウイルスの生存進化によるものです。そのため、空気感染する型が出てくる可能性もあります。
2)時間とともにウイルスの毒性は和らぐウイルスにとって感染側が重症化するのはマイナスです。そのような患者は他人と接触しないので、感染が広がらない=ウイルスの生存率が下がることになります。したがって、自然選択の進化で、時間の経過とともに毒性の弱いウイルスが残っていくことになるのです。
この二つを合わせると、新型コロナウイルスの今後は、「毒性をなくすが、感染力が高まる」と予想されます。ゆくゆくは、他のコロナウイルスと同様に、例年風邪を起こすようなウイルスに変化する可能性もあります。
Q:私の職場では対面で仕事するため、マスクとフェイスシールド両方着用が義務付けられています。ここまでする必要がありますか?
A:マスクの着用は、混み合った屋内などでウイルスを体内へ取り込む量を抑えたり、もし感染していた場合に他人に移さないようにしたりする効果が期待できます。フェイスシールドは正面からの飛沫をストップすることは可能ですが、マスクよりは防御機能は低いと思います。また、両方着用することには意味がないので、どちらか使いやすい方を選べば良いと思いますよ。
Q:夏になり、マスクの着用が辛くなってきました。マスクはしたほうが良いのでしょうか?
A:まず、屋外では感染リスクよりも、熱中症のリスクの方がはるかに高いので、人混みでない限り着用する必要ないと思います。夏場は冷房のある室内以外のマスク着用はやめましょう。得られる恩恵よりも、不快感の方からのストレスの方が、よっぽど不健康だと思います。
Q:感染しないように、避けた方がいい場所はありますか?
A:避けた方がいい場所などはありません。病気をお持ちの高齢者は、できれば混み合った屋内は避けるのが望ましいですが、それでも、マスクをして入れば基本的にどこへ出かけても大丈夫でしょう。
Q:クラスター感染(集団感染)が起こる仕組みについて教えてください。
A:クラスターの仕組みはスーパースプレッダーと呼ばれる、ウイルスを沢山放出している人がいる場合に起こる現象です。スーパースプレッダーが、その場に居合わせた人々にウイルス感染させることで起こります。スーパースプレッダーは一つの場所に複数いる場合もあり、誰がスーパースプレッダーなのかは、分からないことが多いので、追跡などの対処が難しい場合があります。 しかし、感染したからと言って重症化するかは、前にお話ししたリスクファクターによって変わります。重症化しやすいのは、「ウイルス摂取量x基礎疾患保持x年齢」の方程式であることを忘れずに。
Q:感染についてどこまで気をつければいいのか
A:まず、感染=発症ではない。このことを理解することからはじめましょう。私たちには免疫機能があり、ウイルスに感染しても自己防衛することができます。また、自然には様々なウイルスがあり、日々こうしたウイルスと免疫機能は戦っています。また、集団免疫の観点からも、自然に生活をしているなかで、徐々に感染を広めることは決して悪いことではありません。
人はウイルスや微生物と共に生きており、様々なウイルスに感染することは自然の流れです。ウイルスのなかには感染した後慢性化し、ずっと体内に残るものすらあります。どんなに健康な人でも、体内にはなんらかのウイルスが存在している*1のです。ウイルスに対し過度に警戒心を持つよりも、ウイルスは存在するものとして、私たちは人間らしい豊かな生活を目指していけば良いのです。
キーポイントは、「感染を恐れのではなく、重症化を恐れよう」です。 新型コロナウイルスの場合、重症化の リスクが高いのは既存疾患(主に心臓病、肥満、糖尿病、喘息以外の肺疾患*2)を保持している高齢者であることが統計データでわかっています。
>> 高リスク:高齢・既存疾患保持者
>> 中リスク:高齢者・既存疾患なし
>> 中リスク:若年層・既存疾患保持者
>> 低リスク:若年層・既存疾患なし
中〜低リスクグループは、ほぼ通常通りの生活で大丈夫だと思います。 もし、感染リスクを抑えるのであれば、以下を心掛けましょう。
*1 屋内の混み合った場所ではマスクを着用する。混み合ってない屋内や野外は必要ない。参照
*2 新型コロナの症状には原因不明の熱、突然の味覚や嗅覚障害、突然の原因不明の下痢や嘔吐、突然の原因不明な息切れ咳や頭痛などがあります。参照
このような症状があるときは自宅で静養するか、どうしてもの場合は必ずマスクをして外に出る。
Q:感染予防として次亜塩素酸水やアルコールなど、いろんな商品がありますが効果はあるのでしょうか?
A:現在のところ、次亜塩素酸水に関しては、確かな効果は実証されていません。消毒には、2%に希釈した漂白剤や70%エタノール(水30%に対してエタノール70%を混ぜたもの)が基本的には使われていますが、*他にも様々な物が有効とされています。*参照
Q:もし自分が感染して無症状で行動した場合、人に移さないか心配です。感染させない方法はありますか?
A:人と間近で話すなど、濃厚接触をする時にはマスクの着用を心掛けるくらいで大丈夫です。感染したり・させたりすることを恐れたり、感染することが悪いような考え方は、より深刻な社会的不安やストレスを生み、差別的な行動に繋がります。むやみに気にせず、もっと日常生活を楽しみましょう。
Q:日本では新型コロナウイルスより、インフルエンザウイルスの方が死者は多いと聞きました。実際はどちらが危険なウイルスなのでしょうか?
A:毎年、流行インフルエンザで死亡する患者は日本で平均2000人程度。2018年度は3300人でした。新型コロナ死亡者は、2020年6月現在で900人台です。比較すると、インフルエンザの方が年間死者数は多いようです。しかし、どちらが危険かは最終的な統計を取らなければ分からないことです。
Q:無症状や軽症でも、CTを見ると肺にダメージがあった感染者のケースをニュースで見ました。症状がなくても、気づかぬうちに重症化することはあるのでしょうか?
A:CTに映る異変は炎症、すなわち免疫細胞が活性化している証です。これは、無症状でも免疫細胞がウイルスと戦っていることを意味します。また、重症化というのは症状の話なので、気付かない場合は重症ではないということになります。
Q:免疫力を高めるために、どのようなことを心がければ良いでしょうか?
A:免疫力を高める努力ではなく、免疫力を下げない努力をしましょう。そのためには、栄養のあるバランスの取れた食事と睡眠、適度な運動をし、心身ともに健やかに過ごすことが大切です。特に、ストレスは免疫細胞を抑制する一番の原因になります。ストレスがかからないような、楽しい生活を心がけるようにしましょう。
Q:猫や犬も感染すると聞きました。ペット経由で人間に感染することはありますか?
A:ペットから人に感染することは確認されていません。逆に、人から犬や猫に感染するとの報告はありますが、ペットに症状が出ることはありません。
Q:蚊から感染する感染症もありますが、新型コロナも感染することはありますか?
A:蚊や他の虫も新型コロナウイルスを保持することができないので、感染経由になることはありません。安心してください。
Q&A
抗体検査とは?
抗体検査は抗体の検出で「感染歴」を調べるものです。検出された抗体の抗ウイルス機能を調べる検査ではありません。抗体検査はウイルスの一部のたんぱく質から検査用の検体を作り、試薬に付着するかどうかで「ウイルス感染歴がある」ということが証明されます。その感染歴が進行形か過去形かはわかりません。
また、検査しても偽陽性や偽陰性の可能性もあります。
抗体獲得したかどうかを知るためには?
PCRで陰性、抗体検査で陽性の結果が出れば、感染歴があり、ウイルス保有者ではないことが言え、感染者を広げる可能性は無くなります。
再感染リスクはないのか?
一度感染したウイルスには感染することはありません。ウイルスが変異すれば感染する可能性はありますが、変異にも時間がかかるため、おおよそ今シーズンの型においては感染することがないと思われます。
再発症は、新型コロナの場合はまだ不明ですが、通常のウイルスではありません。今回報告されたものの多くは、PCR検査で偽陰性結果となったのち、再度検査をして陽性となった場合や、自分の中に残っているウイルスによって、再び症状が出てしまったケースが考えられます。
また、第2波感染ピーク、第3波感染ピーク、と言われるものは、隔離されていた未感染者が感染することを意味するため、再感染という意味ではありません。
https://jp.reuters.com/article/covid-reinfection-rok-idJPKBN22K0K6
もしくはPCR検査の性質上、「すでに人に感染させる性質がないウイルスの『死骸』に反応している可能性も
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200513-00010000-doshin-hok
なぜ、検査結果が間違うことがあるのか?
現在の抗体検査の場合、限られたたんぱく質のみで検査を行い、それ以外のたんぱく質に対する抗体は調べていないため、抗体を検出し損ねる場合があります。加えて、ウイルス感染中に発現していた抗体が回復後に消えることもあります。よって、現状の検査キットでは偽陰性は10〜15%くらいとみなされています。偽陽性は違う特異性を持った抗体を誤まって認識することで生じます。現在の検査の偽陽性率は1%未満発生するものと考えられます。
PCR検査も、鼻の粘膜での検査であるため、それ以外に潜伏しているウイルスを検知できないことがあります。PCR検査では死んでいるウイルスか生きているウイルスかの区別はできません。このようなサンプリングエラーも偽陽性や偽陰性につながります。
COVID-19には大きく分けて三つの型が既にあることがわかっていますが、その場合一つの型への集団免疫で他の型にも効果はあるのでしょうか?
上久保先生の論文によると、集団免疫を獲得できるウイルス型もあれば、逆に悪化させるのもあると想定していますが、実際にはまだ分かりません。今は疫学に基づいた見解のみが出されているので、関連性でしかありません。しかし、コロナウイルスは遺伝子変異を抑える機能を持っているので、変異量は他のウイルスに比べて少なく、あまり変わらないと言えます。その場合は cross protection がかかる可能性が大きく、よって少し型の違うウイルスからでも全体的に集団免疫は獲得できる見解が持てると思います。
免疫証明が必要なのでは?
差別を引き起こす危険性があります。免疫証明を出す必要はないでしょう。