発症についてのデータや仮説
集団免疫を得るためには、人口の60〜80%が感染する必要があります。
ここからは、現在わかっている発症についてのデータや仮説をご紹介していきます。
年齢・基礎疾患による死亡率の違い
基礎疾患や肥満度が高いほど重症度が高く、また高齢になるほど重傷率や死亡率が上昇することが統計的にわかっています。(図解出典:SmartFLASH 4/9(木)より)
コロナウイルスの毒性について
コロナウイルスの感染者のほとんどが無症状/軽症です
しかし、その中でも日本人の死亡者/重傷者数の少なさには目を引くものがあります。 特に50代以下の死亡者/重傷者数は極端に少ないのです。
全体的な死亡者率は現時点では6.5%程度と発表されています。しかし、これは PCR 検査で陽性と確認された人数を分母においた時に計算された死亡率です。米カリフォルニア州で行なわれた抗体検査の実験で感染歴を調べたところ、サンフランシスコ近辺(Stanford)と、ロスアンゼルス近辺(University of Southern California)の感染歴のある実際の人数は推定の50倍多いということが判明しました。
ニューヨーク市内は感染者数がPCR検査で15万人と発表されています。しかし、抗体検査で人口の20%ほどがすでに感染歴があると判明されました。ニューヨーク市内の人口820万人に対し、180万人の感染者ということになります。PCR検査を徹底的に行なわれたニューヨーク市でもこのように総定数より10倍多いという違いが出ています。
ー 各国では?
同じような抗体検査の結果において、スペインは総定数の10倍、フランスは総定数の15倍と出ています。欧米に比べて、日本ではPCR検査がほとんど行われていないため、倍率はこれ以上と推定されます。たとえば、慶應大学病院で4/13 - 19の期間に行われた術前および入院前の PCR 検査において実に6%(4人/67人)の無症状感染者がいることが発覚しました。もし東京に現在進行形のウイルス感染者が6%もいるとなると、54万人の感染者数ということになります。現在都内でPCR検査陽性の総感染者数が5065人と発表されているので、東京の人口(900万人)を規準に計算すると実際の感染者数は110倍多いことになります。これを全国の統計に当てはめると、 既に180万人の感染者数が存在するということです。
ー 死亡率の比較
東京都の輸血ドナーにランダムで行われた抗体検査の結果は500人のうち抗体所持者は3人(0.6%)と出ています。この数字を使った場合は感染歴総定数の150倍ではなく11倍になります。しかし、輸血ドナーの基準にコロナウイルス感染の疑いがあった、もしくは4週間以内に発熱と下痢の症状があった者は除外されるため、非感染者にバイアイスが掛かってしまいます。すなわち、総定数の11倍は最低ライン(無症状の感染者の率)と言えます。 実感染者が11倍〜110倍の場合、死亡率は全体の0.04%〜0.4%と計算できます。これは10万人に20〜200人という計算になります。30〜40代の日本人においては死亡率が10万人に2〜8人となります。比較として2018年度の交通事故死亡者数(10万人に2.54人)、自殺者数(10万人に16.3人)、入浴中(溺死等)の死亡者(10万人に15人)。
日本人の新型コロナに対する抵抗性
現在のところ、統計データを見ると、日本人は他国に比べて感染による死亡者が少ないことが明らかになっています。その理由として考えられる仮説を挙げてみました。
ー 仮説① 先天的(遺伝的)な原因
日本人のHLA型がウイルスに対する抵抗性を示している
ウイルスなどの細菌から身を守るためには適切な免疫反応を起こす必要があります。ウイルスに対する免疫反応が弱すぎるとウイルスを除去することが困難になり、逆に強すぎると免疫の活性化が強すぎて“自分の免疫細胞が自分を破壊してしまう”ことになります。 免疫反応を左右する一つの要素として細胞表面にある HLA という分子が挙げられます。ウイルスに対する免疫反応を起こすためにウイルス抗原の数々は HLA と結合しなくてはなりません。その抗原等が結合するのか、しないのか、そしてどう結合するかによって免疫反応が変わります。
しかし、HLA 分子は何千種類もあり、人それぞれが持つ HLA 型には多様性があります。HLA の型によって抗原の結合性が変わります。すなわち、コロナウイルスの場合は Covid19 の抗原に適切に結合出来るHLAを持つヒトが良いと考えられます。欧米の多くの国は様々な人種で形成されているため、HLA 型は非常に多様です。しかし、日本は島国であるため、HLA 型の多様性が低く、偏っています。今回は偶然、日本人が多く持つ HLA 型と Covid19 の抗原が一致した可能性があり、それが死亡率低下に貢献している可能性が考えられます。
ー 仮説② 日常的な要因
日本人は日常的に防護する習慣がある
日本人は新型コロナが流行する前から、風邪予防や花粉症対策でマスクを使用する習慣があり、他国に比べ清潔な環境が整っていることからも、ウイルス量を減らすような生活習慣が浸透していたことも影響しているのではと考えられます。
【参考】
・世界のマスク生産:約100億枚(2019年)
・日本のマスク生産・輸入;約55億枚(2018年)
ー 仮説③ 感染ルートの違い
新型コロナウイルスの感染ルートは肺か腸のふた通りあり、日本人はマスク常備で肺からの感染ルートを避けているため、腸粘膜からの感染が多く、肺疾患の発生率や重度が低いという可能性があります。
ー 仮説④ BCGワクチン接種による
何らかの自然免疫の影響
BCGワクチン接種の有無によって死亡率が異なっています。今時点では、関連性はありますが機序は不明です。
ー 仮説⑤ 肥満率や基礎疾患率が低い
肥満率や他のウイルスの症状を悪化させる基礎疾患を持っている患者数が少ないということ。
ー 仮説⑥ 過去の類似する
コロナウイルスからの免疫記憶
アジアには以前から多種のコロナウイルスが存在しており、それに感染した人の割合が多いということ。よって、過去の免疫記憶から今回の新型コロナウイルスに対する免疫が向上され、無症状/軽症の感染者が多いと思われます。
https://www.sciencemag.org/news/2020/05/t-cells-found-covid-19-patients-bode-well-long-term-immunity