ウイルスによる感染症を収束させる方法とは?
では、ウイルスによる感染症が広まった場合、収束するにはどのような方法があるでしょうか?
通常収束方法は大きく分けて二つ、「①集団免疫の獲得」または「②完全隔離による消滅」が考えられます。
① 集団免疫とは?
感染歴があり、抗体を持った人口の割合が高くなるほど、ウイルスは増殖する場所や宿す場所が少なくなって行きます。ウイルスの育つ場所が少なくなると、未感染者がウイルスに遭遇する確率が減り、感染する人が少なくなっていきます。そして、総感染者が人口のある一定の割合(人口の60〜80%)を超えると、ウイルスは感染する場所がなくなり、消滅します。これを『集団免疫』と言います。
② 完全隔離による消滅
ウイルス感染者を隔離すれば、それ以降は隔離された人から他人には感染せず、その状態で治癒に至れば隔離された人から発進されるウイルス は消滅していきます。これを全世界で同時に実行することができれば、ウイルスは消滅する可能性があります。
出典:MEDLEY
抗体のある人=感染し、治療後に抗体を持った人、もしくはワクチン接種により抗体を持った人。感染中でも抗体を持っている場合があるが、それは除外する。
新型コロナが収束するには?
では、新型コロナの場合はどのようなパターンが考えられるでしょうか?
① 自然感染による集団免疫の確立
ウイルスに対する免疫が一番強く備われる方法は、自然感染から治癒することです。自己の免疫機能によってウイルスを撃退すると、免疫記憶により過去に退治したウイルスを覚える力があり、再度同じ型のウイルスでは発症しません。そのため、自然感染治癒者が増えれば、免疫で守れている人口の割合が高くなり、集団免疫を獲得することができます。
③ 治療薬の開発
新型コロナの自然感染者のほとんどは、無症状/軽症ですが、低い確率で重症化する可能性があります。こうした症状を和らげる目的として開発されているのが治療薬です。治療薬を用いれば、重症化率をより低下させながら、自然感染治癒で集団免疫を獲得できます。しかし、今後、いつ、どのような薬が開発されるか、どれほどの効力があるかは確かではありません。また、治療薬でウイルスを除去することはできず、ウイルスを除去するには、免疫機能で除去するしかありません。
④ 完全隔離によるウイルスの消滅
この方法は、ウイルスの感染範囲が限定されている場合、ウイルス感染者がはっきりしている場合(感染者に無症状の者がいない)や感染率が低いときに効果的な手段です。しかし、新型コロナは感染率が高く、既に広域に感染範囲を広げており、大半の感染者が無症状であることから、完全に隔離することは難しい状態です。例え、限られた地域で隔離によるウイルス消滅に成功したとしても、他の地域から来るウイルスからは守ることができません。そのため、全世界からウイルスが消滅しない限りは、いつまでも未感染者は感染リスクから逃れることができないことになります
② ワクチンによる集団免疫の確立
ウイルス感染せずに免疫を得るにはワクチン(予防接種)という方法があります。ワクチン自身の副作用が出る可能性がありますが、上手くいけば 予防接種を行なった人は病気を発症せずに抗新型コロナウイルス免疫を獲得することができます。 しかし、
・ワクチンの開発は簡単なものではなく、一筋縄ではいかない
・ワクチンの開発には最低一年以上かかると予測され、 自然感染と同様の免疫を獲得できるかも不明である
・基本的に自然治癒に比べワクチンから得た免疫の持続性は乏しい
などのデメリットもあるため、ワクチン開発を軸とした収束方法は、長く険しい道のりとなることが予想できます。
この4つの観点から考えると、隔離による新型コロナウイルスの消滅は難しいようです。そうなると、医療負担を避けれる程度に、コロナと共存をすることで、集団免疫を得るということが残された道となります。
隔離生活が続いた場合の私たちの未来
新型コロナと共存すると感染者が自然に増えていきます。これは集団免疫の獲得に向けては良いことなのですが、重症化リスクを考えると隔離も止むを得ないのでは? と思うかもしれません。 では、健康な人も感染をしないように行動を自粛したり、完全隔離(ロックダウン)するような生活が続いていくと、どのような未来が想定されるでしょう?
活動自粛が続けば、経済が滞り、多くの失業者が出ることが予想されます。事実、コロナにより倒産件数や失業者数が増加し続けています。また、教育の場が閉鎖されれば、子どもたちの学習機会を著しく損失させることにもなります。そして何よりも、行動が制限されることにより私たちの生活の質(QOL=Quality Of Life)は大きく低下することでしょう。こうした経済的・社会的問題による2次的被害は、感染者が増えるよりも、大きな問題となってくる可能性もあります。
しかし、これらのデメリットは、
やり方次第で緩和できるのです!
【 隔離生活の場合 】
メリット
・一時的に感染者を減らすことができる
・医療負担を軽減できる
デメリット
・感染者数の減少は一時的のみであり、第2波が起こる
・ウイルスを収束させるのは現実的に不可能
・経済が滞り、多くの失業者が出る ・教育の機会が失われる
・QOL(生活の質)が低下する
【 活動を再開した場合 】
メリット
・普段通りの生活ができる
・集団免疫獲得できればウイルスを収束させることができる
デメリット
・感染者から重症者や死者が出る可能性がある
・爆発的に感染が増えると、医療崩壊する可能性がある
リスクを減らしながらコロナウイルスと共存し、活動再開する道とは?
感染者が減少する中で、活動自粛が解除される地域も広がっています。 しかし、新型コロナに感染しないか、不安な人も多いことでしょう。 先にも述べたように、新型コロナの収束までは長い道のりとなりそうです。 ここからは、新型コロナといかに「賢く付き合うか」について考えていきましょう。
活動再開した場合のリスク
① 重症者や死亡者が増える
② 爆発的な感染増加からの医療崩壊
を減らすにはどうしたらよいのでしょうか?
今、わかっているデータも併せて、より新型コロナと賢く付き合う方法を考えてみましょう。
そもそも日本人は、
世界に比べて重症者数
死亡者数が少ない
現在、感染者データを見ると、欧米に比べて、日本人の重症者や死亡者は極めて低いことがわかっています。なぜそのような差があるのかは、未だ正確には明らかになっていませんが、この4つが仮説として考えられています。
① 先天的な免疫機能による要因
② 日本人の既存的な清潔衛生習慣
③ 基礎疾患や肥満率が低い
④ 過去の類似するコロナウイルスからの免疫記憶
重症化や医療崩壊のリスクを減らすには?
① リスクの低いグループと高いグループに分ける
現在のところ、新型コロナの感染者・死亡者のデータを見ると、50歳以下においては重症化する率が極めて低いことがわかっています。50歳以下で、基礎疾患や肥満度が低ければ、感染しても重症化するリスクは低いため、この低リスクグループから活動を再開させていけば、爆発的な感染や医療崩壊を防げる可能性が高くなります。 逆にリスクの高いグループは、60歳以上の高齢者や基礎疾患、肥満度の高い人になります。多くの人が感染しても、軽症または無症状であることから、高リスクグループは、感染しないように、また感染させないように、十分注意しながら保護・行動していく必要があります。
*この場合の低リスクグループの死亡率は、交通事故死と同等のレベルを想定しています。
② 感染時のウイルス量を減らすため
マスクや手洗いなどで防護する
感染しても軽症で済むようにするためには、感染時のウイルス量を減らす必要があります。そのため、マスクや手洗いで防護しながら、接触するウイルスをなるべく減らすようにして活動する方が良いと考えられます。
③ 免疫機能を高めるように
健康的な生活習慣を心がける
免疫機能をしっかり機能させるためにも、栄養バランスの良い食生活や適度な運動、十分な睡眠を取るなど、健康的な生活習慣を送るように努力することも大切です。
活動再開、その先には…
爆発的な感染を防ぎながら、感染者の波を穏やかに抑えつつ活動再開していけば、いずれ集団免疫を獲得できることにもなります。そして有効な治療薬やワクチンも開発されていれば、重症化を抑えたり、未感染者にも予防接種を行うことで新型コロナ免疫を備えたり、新型コロナを収束させることができるかもしれません。 現在では、業種や地域による感染率の違いも明らかになってきています。いかに医療負担を避けながら、徐々に自然感染を増やして集団免疫を得られるか、柔軟に対応していくことが求められます。
私たちはウイルスとともに生きている
新型コロナウイルス以外にも、私たちの周りにはさまざまなウイルスに溢れています。ウイルスは時にヒトを死に至らしめることもありますが、ヒトには免疫機能があり、また免疫が備わる機能があります。
人類の歴史よりもはるか昔からウイルスは地球上に存在し、ヒトもまた適応する能力がある。私たちはウイルスとともに生きているのです。